きもの、着付けを心から愛しています。ノルマンディーからきました、カミーユです。
はじめまして、私はフランス人のカミーユです。私は現在横浜に日本人の夫と二人で住んでおり、表参道にある着物学校で高等師範の勉強をしています。また、着付け師・着物スタイリストとしての活動を始める準備も進めています。
そんな私が気になっているのは、日本全国に現存するきものは8億枚と言われる中で、約40パーセントの20代、30代女性が着物を経験していない現状です。きものには、歴史、ルール、模様のパターン、生地など、深いストーリーが詰まっています。それらの多くが箪笥の中に隠れていると考えると、私は大変もどかしく思います。フランス育ちの私にとって、このような素晴らしい文化を持つ日本に、ある種うらやましいと感じる反面、当の日本で、素晴らしい文化について知らないのはもったいないとも思うのです。
日本人の中でも、「きもの」に対して尊敬や憧れを持ちつつも、具体的な知識や経験に触れることが少なく、以下のような声を聞くことがあります。
「卒業式や成人式、結婚式ならわかるけど、普段からわざわざ着るのはめんどくさいかな」
「着物って綺麗だとは思うけど、和の文化にこだわっている意識の高い人の着るものでしょ」
「鎌倉や京都での着物デートはありかもしれないけど、高そうだし、私には合わないかな」
「おばあちゃん、お母さんがたくさん持ってるけど、私には古く見えるし着れない」等々
私の目標は、そんなきものと距離を感じている方々に、その魅力を伝え、きものとの距離を縮めるお手伝いをすること。まずはきものと接点がなかった私が、なぜ日本に渡ってきて、きものに魅了され、着物スタイリストを目指すに至ったかを共有したいと思います。
日本ときもの文化との出会い
私が生まれ育ったのは、パリから電車で1時間半ほどの、ノルマンディーのカブール(Cabourg)という小さな街です。


ノルマンディーはモン・サン・ミシェルが観光名所として有名ですが、それ以外の地域は海があって、農業が盛んで、夜になると星が綺麗な田舎です。イギリスに近いから、冬はめちゃくちゃ寒いですが、雪はあまり降りません。日本で例えるなら茨城県のような地域です。


私が幼少期に暮らした家は自然に囲まれ、家と家の間が数百メートルあるような田舎でしたので、幼い頃は友達と頻繁に遊ぶことができず、学校から帰ると、紅茶を飲み、クッキーを食べてから、家の中で本を読んだり、絵を描いたり、歌ったり、自分で物を作ったり、外で動物や、昆虫、カエルなどの爬虫類を観察したり、ひとりで過ごすことが多かったです。


家も裕福ではなかったため、高校に入るくらいまでインターネットもない環境でしたが、そんな中でも日本のアニメや漫画に触れる機会はありました。同じ学校に通う友人や親戚が日本の漫画やアニメのVHSを私に貸してくれて少しずつ日本のコンテンツに触れるようになり、特にポケモンや名探偵コナン、そして数々のジブリ作品は大好きでよく観ていました。また、クリスマスのプレゼントでもらったゲームボーイで、ポケモンやスーパーマリオをよくやっていました。思い返すと私と日本の最初の接点は、漫画、アニメ、ゲームです。
10代になる頃には、「SAYURI」、「さくらん」、「下妻物語」といった、日本のユニークなファッションを強調した映画を見て、フランスで見かけるシックなファッションとのギャップに魅了されました。色使い、服の形、文化的背景に心が動かされました。特に、「SAYURI」では舞妓さんや芸者さんの世界に出会い、着物について知りました。以来、着物に興味を持ち、日本に行って着物文化を体験してみたいと思うようになり、芸者さんや舞妓さんの歴史をよく調べては色々と夢を膨らませていました。
ヨーロッパ各地を転々と
ただ漠然と日本に行きたいと思っていた私は、旅費を貯めるため大学に通いながらマクドナルドでフルタイムで3年くらい働きました。ただそこからストレートで日本に来たわけではなく、学校のプログラムでインターンシップをしなくてはならなかったので、スペインのバレンシアやイギリスのカンタベリーで暮らしました。偶然にもインターン先のスペインの語学学校で、素晴らしい日本人の方と出会い、昔描いていた日本への憧れが再び蘇ってきて、絶対に日本に行くんだと強く思うようになったあの気持ちは今でも忘れられません。


インターンシップも終わり、学校も卒業し、ようやく日本へ!、、というわけではなく、足りない旅費を稼ぐため、父の紹介でミラノで行われた万博で働くことになりました。ミラノ万博ではフランスのパビリオンでベーカリーを売る仕事を1日12時間くらい5ヶ月しました。


万博が終わると、今度はフランスのパリに住み、そこで6ヶ月また旅費を貯めるための仕事をしました。日本までの道のりはとても長いものでしたが、ヨーロッパを縦断し様々な方々に出会い、よい経験となりました。だからもう今はヨーロッパに住みたいとは全く思わないです。ただたまにフランスの食べ物は恋しくなることはあります。機会があればいつかフランスの食べ物についても紹介したいと思います。

日本に行くまで右往左往しましたが、これまでがざっと来日するまでの私です。来日したのは2016年ですので、もう7年以上日本に住んでいます。私の前世はきっと日本人だったんだと思うようにまでなりました。
次の回では、来日してからの生活や、日本での暮らし、はじめて着物を着た時の話について紹介します。
